あなたは『シングルモルト』という言葉は知っていると思いますが、それが実際にはどのようなものなのか、という詳しい情報は知らないのではないでしょうか。
改めて考えると言葉だけ知っていて、その正体については詳しく知らない、というモヤモヤするような状態でしょう。そのモヤモヤをきれいさっぱり解消してしまいましょう。
シングルモルトとはいったい何なのか
当然ながらシングルモルトはウイスキーの一種です。ウイスキーとは非常に広い意味の言葉であり、その中の一つとしてシングルモルトというものがあります。
突然ですが、サントリー角瓶よりはサントリー山崎の方が値段的に高いですよね。山崎はシングルモルトです。では高い方がシングルモルトと言う事でしょうか?
シングルモルトは値段の違いによるものではありません。とはいえ、一般的に安価なウイスキーとしてよく知られるものにはブレンデットウイスキーが多かったりします。
いくつかの蒸留所で蒸留されたモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして作られたウイスキーのことです。
シングルモルトは一つの蒸留所で製造されたモルトウイスキーだけで造られたウイスキーのことを指します。結果的に高価なものが多くなっています。
例えば、ニッカウイスキーであれば、余市蒸留所と宮城峡蒸留所がありますが、余市蒸留所で造られたモルトウイスキーだけを瓶詰めしたウイスキー、又は宮城峡蒸留所のモルトウイスキーだけを瓶詰めしたウイスキー、だけがシングルモルトと呼ばれます。
ですが、それはモルトウイスキーしか使用していなかったとしても、2つの蒸留所のウイスキーをブレンドしているのでシングルモルトではなく、モルトウイスキーと呼ばれています。
簡単にまとめますと、シングルモルトとは1つの蒸留所で作られ、他の蒸留所のウイスキーを一切混ぜていないウイスキーのことを指します。シングルですのでその名のとおりですね。
シングルモルトの特徴とは
さらにシングルモルトについて掘り下げていきましょう。まずはシングルモルトの特徴を一言でいうと『個性』です。この言葉が一番しっくりくると思います。
ブレンデットウイスキーはいくつかの蒸留所のシングルモルトやグレーンウイスキーを混ぜて、多くの人がおいしいと思える大衆向けなウイスキーになっています。
もちろん飲み比べると味の違いがあり、あなた好みの味を選べますが、シングルモルトの場合はその味の差が特に激しいのです。それを『個性』としました。
それではなぜ、シングルモルトの味の差は特に激しいのか。それは製造されたたった1つの蒸留所の『個性』が全面的にでるからです。
このような『個性』により、このシングルモルトウイスキーの蒸留所はどのような個性的な味わいを造り出しているのだろうか、と考えながら飲めます。
これこそが個性的な銘柄ぞろいのシングルモルトの楽しみ方ではないかと思います。わかりやすく違いを感じれると思いますので、ぜひとも飲み比べをしてみてもらいたいですね。
初心者向けのおすすめシングルモルト3選
最後にあまりシングルモルトを飲み慣れていない方でもきっと楽しめるおすすめの初心者向けシングルモルトを3つ紹介していきす。
ボウモア
ボウモアはアイラモルト入門にぴったりなシングルモルトです。なぜなら、ボウモア蒸留所は現在サントリーが所有していますので、いろんなお店に並んでいます。
スコットランドにアイラ島という淡路島よりやや大きいくらいの島があります。そのアイラ島で作られるシングルモルトを「アイラモルト」と呼びます。
アイラ島はウイスキー好きからは『聖地』とも呼ばれています。一貫して、ピートによるスモーキーな香りを特徴としています。世界中から蒸留所めぐりを楽しむ観光客が来ます。
また、アイラモルト独特のスモーキーさが多少抑えられていて、シェリー樽からくる温かみのあるまろやかさが感じられるので、初心者でも飲みやすいでしょう。
それでも、しっかりとピート臭さは感じられるおすすめの逸品です。ボウモア蒸留所はフロアモルティングという伝統的製法を守っている蒸留所の一つでもあります。
ウイスキーの原料の大麦麦芽を水に浸したあとコンクリートの床に広げ発芽を促す工程のことです。発芽がムラにならないように、一定の間隔で麦芽をシャベルですき返す手間のかかる作業です。そんな職人魂が込められたのがボウモアです。
ラフロイグ
ラフロイグもサントリー所有となっているので、店頭でよく見かけします。シングルモルトを楽しむ人の中にラフロイグファンは少なくありません。
初心者が始めてラフロイグを飲むと、まずピート臭さをすぐに感じると思います。ボウモアよりもピート臭く、スモーキーなシングルモルトです。
何度かでてきている「ピート臭い」という表現があります。これは赤チン臭いということです。その独特の風味は、蒸留所が所有する土地から切り出されるピートにあります。
そのピートには、多少のコケが含まれているため、薬品のような特有の香りがします。そして、ラフロイグ蒸留所はバーボン樽にこだわっているのも特徴の一つです。
ラフロイグのファンの一人にチャールズ皇太子がいます。皇太子はシングルモルトでは初めて「プリンス・オブ・ウェールズ御用達」の許可をあたえました。イギリス王室お気に入りの逸品をぜひお試しください。
スプリングバンク
最後にアイラ島から離れて、キャンベルタウンのスプリングバンクを紹介します。ある人はスプリングバンクをただショッパイだけだと評価し、ある人は塩気の裏にある香りと味わいに感激していました。
このスプリングバンクの特徴はその塩気です。ウイスキーに対して、甘く香しいイメージを持っている方にとっては意外な特徴と言えると思います。
このスプリングバンク蒸留所があるキャンベルタウンには、昔は30ほどの蒸留所がひしめきあっていましたが、現在は3つしか蒸留所がありません。
キャンベルタウンはスコットランド西側のキンタイア半島の先端付近に位置する都市です。20世紀の初頭ではまさにスコッチの中心地でした。
しかし、品質よりも量を重視した生産に失敗してしまい、そのせいでキャンベルタウンのウイスキーは粗悪品と見なされてしまいました。
そのような中でスプリングバンク蒸留所が生き残ってきたのは、厳しい経営の中でもこだわりを決して捨てなかった職人魂のおかげでしょう。
いまだに麦芽づくりから瓶詰めまでを一貫して行なっています。ボウモア蒸留所と同じようにフロアモルティングを行なっています。まさに老舗ですね。
そんなスプリングバンクをあなたは、ただショッパイだけだと評価しますか?それとも、塩気の裏にある香りと味わいに気付いて感激するでしょうか。
まとめ
シングルモルトとは何なのか、知ってもらえたのではないでしょうか?もっと細かい情報はありますが、基本的な内容は抑えてもらえたと思います。
- シングルモルトは1つの蒸留所のみで作られたブレンドされていないウイスキー
- シングルモルトの特徴は味わった瞬間から違いを感じれる『個性』
ウイスキーをもっと好きになってもらうためにも、まずはシングルモルトをいくつか飲み比べてみてください。蒸留所の『個性』を感じながら飲むというワンランク上の楽しみ方ができるでしょう。