そもそもスコッチがウイスキーの一種であるということはあなたもご存知かと思います。ウイスキーとは非常に広い意味の言葉です。
分類の仕方も様々です。そんなウイスキーの一つであるスコッチについて紹介します。スコッチの原料はもちろん、先人の驚きの工夫も紹介していきましょう。
スコッチの原料とはいったい何なのか
スコッチは何でできているのでしょうか?原料は何だと思いますか?ブドウ…ではありません。ブドウを蒸留して造られるお酒はブランデーです。
ズバリ!スコッチの原料は『大麦』です。NHKの朝ドラ「マッサン」の主題歌は、中島みゆきさんの“麦の唄”でしたね。それは竹鶴政孝が造ったウイスキーの原料にちなんだものでした。
竹鶴政孝はスコットランドでウイスキー造りの修行をしました。竹鶴政孝のウイスキーの原料が大麦であるということは、つまりはスコットランドのウイスキーであるスコッチの原料も大麦であるということです。
なんとも回りくどい説明になりましたが、そういう事です。ちなみに、参考程度に他のウイスキーの原料もあわせて紹介しておきましょう。
- スコッチ:大麦
- バーボン:トウモロコシ
- カナデァンウイスキー:ライ麦やトウモロコシ
- ライウイスキー:原料のライ麦比率が51%以上の場合
一言でウイスキーと言っても、いろんな原料から作られているのです。意外と知られていない豆知識ですので、ちょっとした飲み会の場などで披露してみるのもいいかもしれませんね。
スコッチを名乗るための条件とは
スコッチはウイスキーの一種で、原料は大麦であると紹介しました。ですが、それだけでスコッチを名乗ることはできません。スコッチを名乗るための条件、つまり『スコッチの定義』はこれです。
- 大麦麦芽と水のみを原料(全粒ならば他の穀物を加えてもよい)とし、スコットランドの蒸留所で作られたもの。そして、その蒸留所内にてマッシュされ、発酵基質は細胞の同化作用による酵素系に限り、発酵時に加えることができるのは酵母(イースト)のみであること
- アルコール度数は、蒸留によって大麦麦芽の香りと風味を損なわないように94.8%未満であること(下限は40%)
- 700ℓ以下のオーク材の樽を使い、 スコットランドの消費税保税倉庫に3年以上寝かせること
- 原料の色、香り、味を保っていること。添加が許されるのは、水および色づけのためのキャラメルのみ
この4つの条件ををクリアしたウイスキーこそがスコッチと名乗ることができるのです。実はスコッチにもしっかりとした定義があるのです。
スコッチの原料は大麦の中でも二条大麦
ここからはさらにスコッチの原料について掘り下げていきましょう。スコッチの原料となる大麦は、世界最古の穀物の一つと言われています。
約3000年前、古代エジプトを治めたツタンカーメン王の墓からも、副葬品として納められた大麦が発見されています。当時から大麦を使ってパンやビールが作られていたと考えられています。
その大麦はイネ科の植物で、実のなる穂の形の違いで、二条種、四条種、六条種、に分類されています。このうちスコッチの原料となるのは、他の種よりも粒の大きい『二条種』です。
大麦の種子は他の植物種子に比べてデンプンを多く含んでいますが、なかでも二条大麦はとくにデンプンの含有量が多く、タンパク質も含んでいます。
二条大麦の栄養と機能を利用する
大麦種子中のデンプンを、酵母がアルコールに変えるのですが、酵母はデンプンを直接、菌体内にとりこむことができません。つまり、酵母はデンプンを分解することができないのです。
ところが、大麦の種子は発芽するときにデンプンを分解する酵素を自分で作りだすことができます。大麦種子はデンプンをエネルギーにして、芽や根を出します。
しかし、その時デンプンをそのままエネルギー源として使うことはできません。そこで、そのデンプンをエネルギー源として利用するための酵素を自ら作りだす機能がそなわっていましす。
これをデンプン分解酵素といいます。人はこれを酵母のアルコール発酵に利用しようと考えたのです。こうしてスコッチが誕生しました。先人の知恵は素晴らしいですね。
具体的にはどのように利用するか
ここからはさらに細かくややこしい内容になります。最後におすすめのスコッチの銘柄も紹介していますので、もう満足してしまった方はとばしてもらってもOKです。
それでは続きです。通常、収穫された大麦種子は、出番がくるまで貯蔵されます。しかし、その間に種子が芽や根をだしてしまってはデンプンを消費していまい、使い物にならなくなってしまいます。
そこで、種子の水分を12%以下に乾燥させて芽や根がでない状態で貯蔵します。お呼びがかかった乾燥種子を眠りから覚ますときは、種子の重さの30%くらいの水を吸収させます。
そのために種子をまず温水に浸したあと、適量の空気を送風するのです。そのようにして種子を目覚めさせる段階で、あえて芽や根を出させて、種子中に酵素をつくらせるのです。
大量の種子に同じように水分を与えて、いっせいに目覚めさせるのは微妙なコントロールが必要な難しい作業となります。現在でも蒸留所によっては、この作業をフロアモルティングという昔ながらの方法で行なっています。
ウイスキーの原料の大麦麦芽を水に浸したあとコンクリートの床に広げ発芽を促す工程のことです。発芽がムラにならないように、一定の間隔で麦芽をシャベルですき返す手間のかかる作業です。
そのようにして種子を目覚めさせたあと、今度はデンプンが消費されすぎないようにするため、適当な段階で再び種子を乾燥させて、発芽の進行を止めます。
この時は通常、水分が5%くらいになるまで乾かすのですが、なるべく速く、しかも、温度をあまり上げずに乾燥させなければなりません。
そのようにしてできた大麦麦芽の中には、多くのデンプンと、デンプン分解酵素が同時に存在している、栄養と機能の塊です。この品質がスコッチの品質にも左右します。
種子を乾燥させる際には、キルンと呼ばれる塔の乾燥室で、ピートなどを燃料にして熱します。その後、栄養と機能の塊である大麦麦芽は、粉砕、糖化、発酵、蒸留、熟成を経てウイスキーとなるのです。
小さな麦一粒にもすばらしい機能が備わっているのです。それを発見し、どうすればいいかを編み出し、余すことなく利用する人間の能力もすばらしいです。
ハズレなし!スコッチ定番の4銘柄を紹介
それでは最後に数あるスコッチの中でも定番の4銘柄を紹介します。銘柄によって香りや味わいは様々です。あなた好みのスコッチを探してみてください。
グレンフィデック
【モルト/スペイサイド】
ブレンデッド・ウイスキー用に生産していたものをシングルモルトとして発売したものが大ヒットしたのがグレンフィディックです。
今では、世界全体でのシェアはおよそ35%にのぼり「世界で一番飲まれているシングルモルト」となりました。フローラルで洋ナシなどのフルーツのような味わいが特徴のスコッチです。
バランタイン
【ブレンデッド】
スペイサイド、アイラ、ハイランドなどの地域の40種類以上のモルトと、4種類のグレーンがブレンドされている、ソフトで甘い味わいのウイスキーです。売上は全ブレンデッド・ウイスキーの中でもトップ3に入るレベルの人気銘柄です。
マッカラン
【モルト/スペイサイド】
シェリーの香りと、果実の味わいが特徴的です。ブレンデッド用のモルトウイスキーとしても評価が高く、その品質は「シングルモルトのロールスロイス」と讃えられています。
ラフロイグ
【モルト/アイラ】
チャールズ皇太子、愛飲の酒としても知られるスコッチです。蒸留所が海辺に建てられている影響からヨード臭(消毒臭)、ピート由来のスモーキーさ魅力です。
風味は薬品、消毒液、タールに例えられることがあるくらいクセのある味わいです。好みは分かれますが、好きな人はとことん好きな逸品ですね。
まとめ
スコッチの原料、そしてその原料をどのように利用しているのかを紹介してきました。スコッチの定義や定番の銘柄なども参考紹介してきました。
- スコッチの原料は『大麦』
- スコッチを名乗るためには4つの条件クリアが必要
- 大麦にはすばらしい栄養と機能がある
- ハズレなしのスコッチ定番4銘柄を楽しもう
ウイスキーは非常に奥が深いですが、スコッチだけで考えてもやはり奥が深いです。スコッチの魅力を知って、さらに興味を持ってもらえたなられしいです。