なんとも率直な主題です。それも仕方の無い事、日々心を休める為に飲むシングルモルトの値段に心を痛めていたら本末転倒ですからね。
安いシングルモルトであれば大抵3,000円代、さらに安ければ2,000円代で購入することができます。その中には、グレングラント、アランモルト10年、ラフロイグクオーターカスク、ボウモア12年、グレンマレイ・クラッシック、グレンチンキー、オーヘントッシャン12年等々が有ります。取り上げたら切りが無いほどです。
安くて美味しいシングルモルト
まず、なぜ安いのか考えてみましょう。比較的安いシングルモルトは年数表示が若いか、書かれていませんね。これはウイスキーを樽に寝かせた年数を表しています。
安いシングルモルトですと、せいぜい12年が良いところです。年数表記する場合の法律がありまして、ブレンドした樽の中で最も若い樽の年数表記をしなければなりません。
例えば、ボウモア12年の場合、12年の樽とそれ以上寝かせて有る樽のブレンドに成る訳で、決して10年の樽はブレンドされていないという事に成る訳です。ラフロイグクオーターカスクは年数表記されていませんから、10年以下の樽も使用されている事に成ります。
しかし、このラフロイグクオーターカスクは短い年数で樽の風味を出す為に、通常使用する樽の4分の1の大きさの樽を使用しています。そうすると樽の中のウイスキーが、樽に接する表面積が広く成るという工夫です。
樽に寝かせる年数が短ければ、造り手としては土地代やら様々な費用が掛からないので比較的安く販売できるのです。
安くて美味しいシングルモルト2
樽の中の熟成は平均的に言って何年位でピークに達するのでしょうか。一般的に10年と言われています。
ですから比較的安いシングルモルトでも、10年や12年は寝かせている訳ですし、そうでは無くても造り手が様々な工夫をしている訳ですから、大抵は美味しく飲めるはずです。
大抵と言いますのは、人にはそれぞれ好みが有るので、ある人には美味しいと感じられても他の人には美味しく感じられない事が有るからです。
例えば、オーヘントッシャン蒸留所はシングルモルトウイスキーでは珍しく3回蒸留する蒸留所です。3回蒸留すると熟成が早くなる様ですが、ライトボディーに成る感じがします。ライトボディーが好きな人とフルボディーが好きな人との違いが出て来る訳です。
“うんちく”はいいから
はい、安くて美味しい私好みのシングルモルトを一つ紹介します。アイラモルトのボウモア12年。アイラ島に有る蒸留所のシングルモルトです。
ですからピート香がしますし、樽を寝かせている第一番倉庫は海抜ゼロメートルに位置し、海の飛沫がかかる所に有りますので、その塩気も感じ取る事ができます。
バーボン樽に寝かせたモルトとシェリーダルに寝かせたモルトがブレンドされていますので、シェリー樽の丸みが何となく全体を包んでいるミディアムボディーです。お試しあれ。
高いシングルモルト
上記で比較的安いシングルモルトの安さの理由について述べましたが、高いシングルモルトの側から高さの理由について述べておきましょう。上記でも述べた通り、基本的に土地代管理代が掛かる訳です。
それに加えて、天使の分け前が増えるのです。樽の中でウイスキーはどのように熟成して行くか、解明されていない部分が多く有りますが、樽が呼吸をして樽の中のアルコールが毎年少しずつ蒸発して行っている事は確かです。
大体一年で2%から3%蒸発すると言われ、10年で樽の中のモルトの4分の1は無くなるのです。15年、20年、25年経つとどれくらいのシングルモルトが無くなるのでしょうか。無くなるモルトウイスキーを天使の分け前、エンジェルシェアーと言います。その分消費者の負担が増えるという訳です。