ブラックアダーって何?と思われる方もいる事でしょう。ブラックアダーとは1995年にザ・モルトウイスキーファイルの著者であるジョン・レイモンドとロビン・トゥチェクが創業したウィスキー専門のボトラー、つまり瓶詰業者のことです。
このブラックアダーのローカスクシリーズは、ある意味ウィスキー樽の中身を最も再現しているボトルといえます。ブラックアダーを紹介する前に、少しウィスキー樽の事を紹介しましょう。
モルト原酒はボトリングされる前に、シェリー樽やバーボン樽、大きさが違う様々な樽に何年も寝かされ熟成を迎えます。
しかし、熟成した際の味わいに作用する要素は、シェリー樽かバーボン樽かどんな大きさの樽か、と言う事以外にも幾つか有ります。
樽材
樽材、つまりどのような木で作られた樽に寝かせるかによって、ウィスキーの薫りと味わいは大きく変わって来ます。ウィスキー造りに多く使われているのがオーク材です。
オーク樽で熟成されたウィスキーは淡い黄金色とバニラやナッツのような香りが特徴です。そのオーク材がアメリカのものか、ヨーロッパのものかという事でも風味に違いが出ます。
日本ならではの樽材も有ります。それはミズナラです。ミズナラ樽で長期熟成することによって、伽羅の香りとも白檀の香りともたとえられる独特の熟成香を身につけます。
チャー
さて、それらの材木を使った樽にニューポットを寝かせるのですが、ただ樽を作ってニューポットをいれるのではありません。ただ、空いたシェリー樽にニューポットを入れるのでもありません。樽の内側を更に加工するのです。
どのように?樽の内側をバーナーで炙り焦がすのです。樽の内側を強い熱で炭化させる方法をチャー、また何回か使用した樽を活性化させるために再度熱処理をおこなうことをリチャーと言います。
そのようにチャーする事によって、樽内部にバリニンといった甘い熟成香味成分が生成されます。炭化層には未熟成香を減少させるはたらきもあり、香味に大きな影響を与えます。
オーク材からはリグニン、ポリフェノールなどの成分が溶け出します。そのリグニンは甘い香りのバニリンを生み出し、ウィスキーが琥珀色を深めていくのはポリフェノールなどの成分によりますが、こうした成分の溶出は、チャーの度合いにもよるのです。
ブラックアダー
さて、ブラックアダーですが、このボトラーの製品は創業した時から、全て氷点下フィルターを使っていません。もちろんカラメル着色も行なわずにボトリングされ、ボトリング工程で失われるモルトの量は1%未満と言われています。
これはスコットランドでも例外的な低さで、樽の中の状態にきわめて近いものであることを意味しています。このブラックアダーは、イギリス国内はもちろんの事ヨーロッパ各国、アメリカ、そして日本に出荷しています。
日本国内であれば通販でも買えます。ブラックアダーのROW CACKシリーズの発想は単純ですが、シングルモルトファンが大喜びする企画だと思います。
樽の中の沈殿物も一緒にそのままボトリングしたのです。もちろん、他の企画と同じく氷点下フィルターもカラメル着色もしておらず全てカスクストレングスです。除去しているのは樽由来の大きな木片だけです。
さて、沈殿物の中には何が含まれると思いますか。そう、樽の内側の焦がした木片が含まれるのです。もちろんボトリングするのですから、瓶の口より大きな木片が入る訳はありませんが、確かに黒い炭が沈殿しています。
樽の中がそのままボトリングされている感じですよね。ブラックアダーROW CACKシリーズは700mlで安い物で1万円弱、高い物で1万円代です、どこの蒸留所か、何年寝かせているかで値段が変わって来ます。
200mlのものや50mlのものも販売されています。樽の中で眠っていたシングルモルトを、あなたの口の中で爆発させてください。